カワムツ コイ目・コイ科 |
標準和名 | カワムツ(川と魚偏に陸の部首) | |||
分 類 | コイ目・コイ科・ダニオ亜科・カワムツ属 | |||
学 名 | Nipponocypris temminckii / Zacco temminckii | |||
英 名 | Dark chub | |||
分 布 | 中部地方より南 | |||
生息環境 | 河川の上流から中流域など | |||
全 長 | 15cm 程度 | |||
別名・地方名 | モト(近畿地方)、ムツ・モツ(琵琶湖周辺)、アカバエ・ヤマソ(北九州)、その他・ブト、アカマツ、ハヤ・ハエ(混称)など | |||
カワムツはコイ目・コイ科に属する淡水魚で、背面は褐色や黄褐色、体側中央に暗い藍色の幅広い縦縞が一本あり、腹部は白っぽい。 しりびれは大きく、胸びれと腹びれの前縁は黄色っぽい。 また、成熟したものは頭部の下面と腹部にかけてが赤っぽく、顔に追星があらわれる。 成長すると平均して15cm程の大きさになるが、雄の方がしりびれや体が大きく、体の大きい雄だと全長20cmを超えるものもいる。 しりびれが大きい事などから、一見して同属のオイカワに似ている感じもするが、オイカワは体側に7~10筋の横縞が並んでいるのに対して、カワムツは黒っぽい縦縞が一本あるだけなので見分けることが出来る。 また、近縁種のヌマムツとも形態がよく似ていることから、以前は両種ともタイプの違う「カワムツ」として扱われていた。 しかし、交雑がないことなどから、現在では従来の「カワムツA型」をヌマムツ、「カワムツB型」をカワムツとしている。 外観上の違いは、カワムツの方が鱗が大きく、吻先もずんぐりした感じで、胸びれや腹びれの色も異なるほか、しりびれの軟条数もカワムツの方が多い。 カワムツは能登半島と天竜川より西の本州、四国、九州に自然分布しているが、北東部を除く朝鮮半島や中国の四川・淅江省、ベトナム北部、台湾などにも分布している。 また、移入経路などは分っていないが、国内では関東地方や宮城県などにも移入が確認されている。 河川の上流から中流、湖沼などに生息するが、河川では流れの緩やかな淵に多く生息している。 オイカワと比べるとより上流部に生息し、ヌマムツやオイカワに比べ、より水のきれいなところを好むようである。 岩などが点在する場所や、柳などの岸辺の植物が水面に覆いかぶさったような所を好み、警戒心が強く、人などが近づくと素早く岩の間や植物の陰などに隠れる。 食性は雑食性で、水草や付着藻類のほか、水生昆虫や底生動物、小魚なども捕食し、どちらかと言えば動物質のものを好む。 産卵期は5月中旬~8月下旬頃で、つがいで流れの穏やかな浅瀬などの砂礫内に卵を産む。 産卵は日中に行われるが、この時期の雄ははっきりした婚姻色を表し、頭部の下面や腹面は朱色や暗赤色となり、背びれ、腹びれの前縁も鮮やかなオレンジ色となる。 また、頭部としりびれの白い追星もはっきりとしたものになる。 飼育下での寿命は7年程と言われているが、自然下ではそれよりも短く、3~4年程で、1年で2~7㎝、2年で7~13㎝、3年で11~15㎝程に成長する。 ところで、本種の間には一種の認知関係(順位関係)があると言われ、雌をめぐって雄の間には順位が形成され、順位の高いものだけが、雌とつがいになって産卵を行うと考えられている。 また、産卵のときに雌とつがいになれなかったものが群がり、卵を食べることがあるとも言われている。 流通はしていないが、分布地の河川の中流から上流域ではよく見かけられる魚で、ところによっては食用とされる。 釣りや投網などで捕らえて天ぷらや唐揚げ、甘露煮などにするが、オイカワよりは美味しくないとされる。 カワムツは水のきれいな自然環境が残る河川などに生息するので、近年の護岸や川底などの河川の改修によって、生息数は減ってきている。 コイ科の魚類へ / このページの先頭へ |