イトヨ

イトヨ ストゲウオ目・トゲウオ科

イトヨ

イトヨ 1イトヨ 2イトヨ 3イトヨ 4

標準和名 イトヨ (糸魚)
分 類 トゲウオ目・トゲウオ亜科・トゲウオ科・イトヨ属
学 名 Gasterosteus aculeatus
英 名 Three-spined Stickleback
分 布 北半球の冷水域など
生息環境 沿岸や河川、湖沼など
全 長 5~11cm 程度
備 考 背びれ・2~4棘11~15軟条、しりびれ・1棘8~11軟条
保護状況 環境省レッドリスト・絶滅危惧種
イトヨは北半球に分布しているトゲウオ科の魚で、沿岸や入り江、汽水域などの他、河川や湖沼、小川や用水路などにも生息していて、サケのように川で生まれて海に下っていく降海型と、淡水域で一生を過ごす陸封型が知られている。

北アメリカではバッフィン島からハドソン湾にかけて分布し、西海岸ではカリフォルニアからアラスカを経てアリューシャン列島などに分布している。
また、グリーンランド南部のほか、ヨーロッパでは北緯35度辺りから北緯70度辺りにかけて見られ、アジアでは日本や朝鮮半島、ベーリング海などに分布している。

淡水域では水草の多い流れの緩やかな川や小川、湖沼などに生息しているが、沿岸のものは、時に水深100m辺りのところでも見られると言われている。
国内でも降海型と淡水型の両方が見られ、降海型は利根川や島根辺りから北に分布していて、淡水型は北海道や福島、石川、福井、栃木などに散在している。

体は降海型の方が大きいが、いずれも体は強く側扁した長い紡錘形で、尾柄は細い。
体側にはトゲウオ科に見られる特徴のある鱗板が見られるが、この鱗板はハリヨとは違って、ふつうは尾柄まで並んでいる。
また、背びれの棘は2~4棘だが、普通は3棘が多い。

体には金属光沢があるが、体色は淡い褐色や暗い青色、緑色を帯びたものなど、生息環境などによって差があり、暗い雲状の斑があるものなども見られる。
澄んだ冷水の環境を好み、群れをつくって生活している。
水生昆虫や落下昆虫のほか、小型の甲殻類やワーム類などを食べるが、小さな魚や魚の卵なども食べる。

国内の降海型のものは2月の下旬頃から川をのぼりはじめ、小川や水田の溝などに定着する。
産卵期は地域によって差があり、北陸では4~5月頃とされているが、北海道では9月以降にずれ込むこともある。

この時期の雄は背側が青緑色、鰓蓋や腹側はオレンジ色の婚姻色を現す。
雄は群れから離れ、砂泥底などにすりばち状の小さなくぼみをつくり、水草などを集めて産卵の為の巣をつくる。
巣の周りには縄張りを張り、この中に入ってくる別の雄や魚などを追いまわし、激しく攻撃する。

産卵後の卵は雄が守る習性があり、孵化した仔魚は3cm程に成長した6月下旬頃には海に下っていく。
多くのものは1年で寿命を終えるが、中には次の年の繁殖に参加するものも見られる。

イトヨは地域によっては唐揚げや天ぷらなどの食用に利用されることがあるが、スカンジナビアでは魚粉や脂などの加工製品に利用されるほか、各地で研究用の実験魚種としても利用されている。

しかし、国内では近年の河川改修や水田の整備などによって生息地が減少し、イトヨの生息数も減少している。
地域によっては既に絶滅しているところもあって、現在はイトヨ日本海型が環境省のレッドリストに絶滅の恐れのある地域個体群として指定されているほか、同じトゲウオ科のトミヨやハリヨなども絶滅危惧種などに指定されている。

写真はいずれも降海型。

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