イタセンパラ

イタセンパラ コイ目・コイ科



イタセンパラ


イタセンパラ 1イタセンパラ 2イタセンパラ 3イタセンパラ 4

標準和名 イタセンパラ
分 類 コイ目・コイ科・タナゴ亜科・タナゴ属
学 名 Acheilognathus longipinnis
英 名 Itasenpara Bitterling / Deepbody Bitterling
分 布 琵琶湖淀川水系、濃尾平野、富山平野
生息環境 浅い沼や池など
全 長 7~8 cm 程度
別名・地方名 ビワタナゴ(京都)など
保護状態 環境省レッドリスト・絶滅危惧IA類(CR)
イタセンパラは琵琶湖淀川水系と濃尾平野、富山平野に分布しているタナゴの仲間で、日本の固有種とされている。
但し、京都方言で「ビワタナゴ」と呼ばれるが、琵琶湖には生息していない。
かつては琵琶湖の内湖などにも生息していたとされるが、現在は淀川水系に局所的に生息しているだけである。

体は著しく側扁し、タナゴの中ではもっとも体が薄い。
体高は高く、背びれとしりびれの基底は長くて大きい。
タナゴ類としては大型で、希に全長12cmを超えるものも見られる。

体色は銀白色だが、少し茶褐色を帯びた様な感じで、鰓ぶたの後あたりに暗色の小斑が見られる。
肩部には斑がなく、体側の縦縞もないか、あってもはっきりとしていない。
側線は完全で、側線有孔鱗数は35~37。
また、吻端は丸く、口ひげはない。

水草の多い浅い沼や池、これに続く細流など、流れのないような所に生息し、主に付着藻類を食べる。
淀川では本流では見られず、ワンドなどに局所的に生息している。

しかし、外部の水域と完全に遮断された止水域では藻類の増殖が阻害されるほか、繁殖に必要な二枚貝の生息も拒まれ、イタセンパラも生息しない。
近年の研究では、台風などによって河川敷が氾濫するなど、産卵地への移動が出来ることが必要であるとされている。

また、アブラボテなど、多くのタナゴ類は春に産卵期を迎えるが、イタセンパラはカネヒラなどと同様、9~11月頃に産卵期を向かえる。
この時期の雄は体全体が暗い赤紫の婚姻色を表し、腹部の下端も黒くなり、背びれやしりびれには濃灰色の地に蒼白色の縦縞が2~3本見られる。
雌でははっきりとした婚姻色が表れず、全体に明るい銀白色となる。

雌の産卵管は太くて短く、卵はイシガイやドブガイなどの二枚貝の出水管を通して鰓に産み付けられる。
雄は産卵の直後、貝の入水管近くに放精する。

卵は一週間程で貝内で孵化するが、仔魚の発生はカネヒラに似ている。
仔魚は貝の中で越冬し、翌年の5~6月に8mm程度に成長して泳ぎで来る。

稚魚は岸辺の水草の間に群れて生活するが、バラタナゴなどとも混生している場合も見られる。
稚魚は動物プランクトンを食べながら成長し、大きくなるにしたがって岸から離れ、6月下旬頃には水面近くから深場へと移って行く。

稚魚はカネヒラやバラタナゴにも似ているが、イタセンパラの稚魚には背びれ中央に楕円形の黒い斑がはいっている。
1年で全長4~6cmに成長し、成熟する。

イタセンパラは分布域や生息地が局所的で生息数も少ない上、近年の開発などによる生息地の減少や環境悪化、また密漁などが原因で生息数は激減している。
昭和49年には天然記念物に指定されているが、現在は環境省のレッドリストで絶滅危惧種(CR)として指定されている他、京都府などでも絶滅寸前種として指定されている。

「イタセンパラ」の和名は濃尾平野の地方名に由来し「板のように平たく、鮮やかな色の腹部をもつ魚」の意であるとされている。


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